クォーツと機械式

腕時計には、電池式の「クォーツ」と機械式の「自動巻き」と「手巻き」などバリエーションがあります。

クォーツ式(Quartz)時計

クォーツ時計の画像

 

現在、最も多く使用されているのが、電池で動く「クォーツ式」です。最も安価な物ですと、100均で売られているデジタル式腕時計もあります。特徴としては、軽くて非常に正確で、しかも値段も安い所ですね。

世間で一般に「時計」というと、このクォーツ式の時計を指しますね。電池が持つ限りは動いてくれて、電池の寿命も3年~10年程度ですね。

クォーツとは、水晶振動子に電圧をかけて規則的な振動を得ることで非常に正確な時刻を得ることができ、元々はスイスのメーカーが基礎理論を見つけましたが、日本のメーカーである「セイコー」が実用化に成功しました。

これは最も普及しているタイプで、秒針が1秒ごとにチッ、チッと動くのが特徴です。通常の電池以外にも、ソーラー式の時計もこの「クォーツ」に分類されます。

このクォーツ時計、実は価格帯によって時間の精度が異なります。最も高価なクォーツ(定価20万円前後)ですと年間での誤差が10秒程度、中級クラスで月に5秒程度、安価な普及タイプで月に20秒程度の誤差があります。

基本的に安価なクォーツ時計は多少時間がずれますが、ある程度時計の時間がずれてきたところで時差を修正すれば良いので、その手間を惜しまなければ充分実用的に使用できます。(数ヶ月に1度くらいですね。)

1970年代、大量生産によって爆発的にクォーツが普及しました。その為今まであった「機械式腕時計」を作っていたスイスやアメリカのメーカーは大打撃を受けました。これは「クォーツ・ショック」と呼ばれています。

また部品点数が少ないため、比較的衝撃にも強く、電池交換だけで長く使えます。一例としては、太陽電池、つまりソーラー式の腕時計でノーメンテナンスで20年以上動いている腕時計もあります。

しかし、高価なモデルであれば念のため5年から7年くらいで点検・清掃を行うことをオススメします。こうすることで製品の寿命をより延ばすことができますよ。

 

また、国産で高級タイプなら大変長寿命です。管理人が持っている腕時計で、38年前に製造されたセイコーのクォーツ時計が今も現役で動いています。当たり外れもあるでしょうが電池さえ交換していれば故障もなく大変長く使えます。

 

 

クォーツ式のデメリット

安価で正確、静かでなおかつ軽量に作れるクォーツ時計。しかし、電池で動いている以上は、その電池が切れると即止まってしまいます。また、電池が切れたまま放置しておくと電池の「液漏れ」をおこして機械そのものが修理不可能になる場合もあります。

また、電子製品ですので部品の生産サイクルも短いです。古いクォーツ時計は、壊れても修理が不可能な場合が多いです。それでも日本のメーカーの時計であれば最低でも10年以上はもつでしょうし、機械的な寿命は最長40年程度といったところでしょうか。

ちなみに、クォーツ式腕時計は電池の残量が残り少ない状態になった場合、アナログでは秒針が1秒ごとの移動から2秒ごとに移動するようになり、電池残量の警告をしてくれる機種が多いですね。またデジタル式では画面全体が点滅することで電池の寿命が近いことを知らせてくれます。(ないモデルもあります。)

あとはデジタル表示が薄くなることで電圧の低下がわかるので、表示が薄くなったら電池交換を考えましょう。(ただし、気温の低下が原因で液晶が薄くなっている場合もあります。)

 

 

機械式時計(自動巻き、手巻き時計)

機械式時計の画像

(スケルトンタイプの機械式時計)

 

電池を使わず、ゼンマイの力で歯車を動かして時刻を示すタイプが機械式時計です。大昔から使われていた懐中時計も同じタイプですね。

クォーツの普及によって機械式時計は一時衰退しましたが、逆に電池が不要で、こまめな時刻修正を行えるなど味わいのある部分も多く、現在でも愛好家は多いです。一般に「高級時計」はこの機械式時計である場合がほとんどですね。

クォーツ・ショック以前は安価な機械式時計がたくさんありましたが、現在ではスイスの時計メーカーが希少価値の高い機械式時計へとスイッチしたため、数千円くらいの手頃で安価な機械式時計は少ないです。

機械式時計のメリットとしては、オーバーホールによってクォーツ式よりも長く愛用できることですね。また、機械式時計のゼンマイの音(チチチ…という音)が好きな方もいます。高級な腕時計は一生モノとして付き合えるので、そこに魅力を感じる方も多いですね。

 

ただしこのゼンマイの音、機械式でも振動数の少ない「ロービート」と振動数の多い「ハイビート」で音が異なります。ロービートは「チチチ…」という音ですが、ハイビートは「チャチャチャ…」という感じです。

機械式はこの「音」も魅力です。極めて精密で複雑な歯車から聞こえる音は、心地よさすら感じますし、この音が好きで機械式をしている方も多いかと思います。

機械式時計は、秒針の動きにも魅力があります。クォーツ式は1秒ごとに秒針が動きますが、機械式は止まらずにジワ~ッと秒針が動きます。ロービートは昔ながらの物で、少し引きずるように針が動きます。そしてハイビートは大変滑らかにススーっと動きます。

大変見栄えが良いので、ハイビートは高級腕時計にドンドン採用されています。またハイビートは誤差が少なく、時刻修正の手間も減ります。一見の価値がありますよ。

 

また時刻もそれなりに正確です。時間のズレは最大でも1日±30秒以下がほとんどですね。国産のものであれば、安価な物でも1日±15秒~20秒以内のズレが普通だと感じます。

クォーツとの差別化もあってか、安価でも美しい腕時計が多いように感じます。またスケルトンタイプといって、上の画像のようにテンプや歯車、ゼンマイなどが良く見えるように透明になっているタイプもあります。このタイプはやや時計の針が見にくくなる傾向がありますが、大変美しいものが多いです。

部品の寿命も長く、無調整でノーメンテナンスでも10年以上動くものが多いですが、基本的には3~5年おきに分解清掃することで長年愛用することができます。

また機械式のゼンマイの力は強く、時計の針を太くて見栄えの良いものが使えるのでデザインの幅も広く、安くても値段よりは高級感のあるモデル(セイコー5など)があります。

高級なイメージのある機械式ですが、1万円前後の機種を壊れるまで使い、使い捨てとすることでメンテナンス代も不要で、結果的に同価格のクォーツ式と同じくらいの費用で使うこともできます。

 

「自動巻き」時計とは、腕時計内部にある「振り子」が手の動きによって自然に動いて回転し、その働きで時計のゼンマイが巻かれるようになっているものです。つまり腕に付けていれば、腕が動くことで自動的に時計が動き続けてくれるわけです。多くの場合、時計に「Automatic」と書かれている場合が多いですね。

機械式時計の裏側

・時計の裏側が透明になっている「バックスケルトン」の一例。時計内部の半円状になっているのが「振り子」。

 

ただし、1日中腕の動きが少ないデスクワークですと、巻きが足らずに時計が止まる場合もあります。運動量は個人差があるので、あまり腕を動かさない方は毎日、決まった時間に腕時計を手で振ってゼンマイを巻くようにすると良いです。こうすることで腕時計の使用中にゼンマイが止まってしまう事を防げます。

ちなみにゼンマイを一杯にまで回せば、だいたい40時間前後そのまま動いてくれる機種がほとんどです。充分な時間動いてくれますね。安価な物でも35時間、海外製の物では70時間近く動く機種もあるそうです。

なお、オリエント社などの製品では、「パワーリザーブ」機能といって、ゼンマイがあとどのくらい駆動がもつのか目盛りで表示してくれるものもあります。具体的なゼンマイの巻き具合が一目で分かるので重宝しますよ。逆にこれが無いとゼンマイの駆動時間の残りが分からないので、毎日同じ時間に巻き上げるのがベストですね。

 

そして「手巻き」時計とは、手動でのみゼンマイを巻けるタイプの時計です。アンティークの懐中時計などがそのタイプですね。時計の側面に付けられた「りゅうず」(正確には「竜頭」)を回し、ゼンマイをいっぱいまで巻くことができます。

昔は手巻き式の腕時計も多くあったのですが、今ではあまり見かけません。管理人もかつては愛用していましたが、毎回手で巻くのは少々時間が長くて面倒な部分もありますが、あれはあれで楽しみというか、魅力もありましたね。手巻き式は現在、国内ではオリエント社が数種類ラインナップしています。

 

ゼンマイの巻き方

なお、手巻き式は少々コツがいります。「りゅうず」(竜頭)はゆっくりとやさしく回してください。静かに180度回したら、そのまま180度近く静かに巻き戻してください。そしてまた180度巻上げ、戻すを繰り返し、「りゅうず」の巻きが固くなったらOKです。

この、少し巻き戻しながら固くなるところまで巻き上げるのが、最もゼンマイに優しい巻き方になります。こうする事でゼンマイの寿命を延ばすこともできます。これは巻き上げ機能のある自動巻きでも同じです。

なお、「りゅうず」を回してゼンマイを巻く部品は、機械式時計の部品の中でも最も脆い部分でもあります。壊さない為にも、手巻き式でない高価な自動巻き時計の場合は「りゅうず」では余り巻かない方が望ましいですね。

 

機械式時計のデメリット

クォーツ式と比べると、秒単位では正確ではありません。1日で±30秒以内の時刻のズレがあります。よって、時刻の正確さを求めるなら不向きです。管理人は国産の機械式時計を愛用していますが、毎日使っても基本的に1週間に1分くらいのズレがあります。なので週に1回の修正で済んでいます。

時間のズレは、腕時計を付けた腕の振り方や時計の向きによっても変わります。またゼンマイを巻かないと数日で止まってしまいます。

時々使う、月に数回しか使わない場合は、その都度使い初めに時刻調整、ゼンマイの巻上げが必要になります。つまり、少々手間がかかります。ただこれが好きな方が多いのも事実ですが…。

また部品点数が多いので、やや重い腕時計になります。そして同じ理由で時計の厚みも結構あります。そしてゼンマイの音がしますが、これは時計に耳を近付けないと聞こえないくらいのレベルです。

基本的に多機能(デイデイトなど日付や曜日を表示するもの)で、大きいほど重いです。極端に重い時計は快適性を損ねますので、軽いモデルが良いならシンプルなデザインで小さめのサイズ(横幅38mmくらい)を選びましょう。機械式でも重さにはかなり幅があります。

 

機械式時計は超精密機械ですので、強い衝撃や振動、強い磁気もダメです。固い床に落とすと壊れる場合も多いですね。なので高級時計店などは事故防止の為、床全面に分厚くて柔らかいカーペットが敷かれているのが普通です。

ちなみに腕時計を落とすのはほとんどの場合、時計の着脱時です。とくに腕に付ける際に落とすパターンが多く、次に多いのは衝撃などで時計のバンドが切れたり外れた場合ですね。

 

故障修理、オーバーホールができる反面、費用はかさばります。これはメーカーや商品によってピンキリですが、一般にスイス製は費用が高価になる傾向があります。それに比べると日本製は精度も高く、部品も長寿命なので、かなり割安な費用で使用できると思います。

 

また精密機器なので、製品の出来、時計の精度にバラツキがあるのも事実です。これも日本製ならばバラツキの幅も狭いので安心して選べます。製品のアタリ、ハズレは時間の精度に現れます。新規に購入後、1日に20秒以上ズレたりしないか確認しましょう。

もし時間のズレが大きい場合は、保証期間中にお店に相談してください。この場合は新品に替えてもらえる事がほとんどですね。また文字盤自体のズレもごく稀にあるのでご注意を。

 

気温によっても時間の精度が左右されます。

機械式腕時計の内部は、「ゼンマイの力」で「歯車」を動かしています。その為、気温が高いと金属の熱膨張の影響で、僅かながら抵抗が増えます。その結果、時計の進みがやや遅れ気味になります。

逆に気温が低い冬場などは、熱膨張が無いために抵抗が少なく、時計の進みは少し速めになる傾向がありますね。あとはゼンマイの巻きが強くても少し速く、ゼンマイの巻きが解けきる前は少し遅い傾向があります。トータルで時間のズレ±0を目指している設計といえます。

 

とどのつまり、機械式時計は「重い」「値段・維持費が高い」「ぶ厚い」「不正確」「少し脆い」というデメリットがあります。

しかし、それでも機械式にはそれを補って余りある魅力があります。デリケートで手間がかかるのがまた愛着が湧く部分でもありますし、維持費用はかかりますが末永く使えるのが魅力ですね。

 

この機械式腕時計、スイスやアメリカなど外国のメーカーだけでなく、日本の各メーカーも各種取り扱っています。とても魅力的な商品が沢山ありますし、所有すると大変愛着が湧くことうけあいだと思いますよ。

 

ちなみに、「スプリングドライブ」という、クォーツ式と機械式時計の両方の利点を生かした、セイコー社独自の機構もあります。これは機械式の「振り子」を動かしてゼンマイを巻き、そのゼンマイが解ける力で発電し、その電力でクォーツと同等の月差±15秒程度を実現しています。これは電池を使わず、それでいて高精度という夢のような機構ですね。

 

このように、安価で便利なクォーツ式、そして高価ながら味のある機械式時計。それぞれに良さがあります。